タイトルは日本語訳名では「法王」のほか「司祭長」や「教皇」とも呼ばれます。
ここに描かれているのはローマ教皇ではなく、各地に点在する教会の司祭長の一人であると解釈できますがこの司祭長の身なりは現職のローマ教皇がモチーフとされています。

法王は、深紅の法衣をまとい、 頭には三重冠を被っています。
キリスト教では数字の３は三位一体『父』と『子』と『聖霊』を表す数字です。頭の三重冠は、 天上界、地上界、地下世界の三領域を支配することを象徴していると解釈できます。

右手を上げて人差し指と中指をそろえて立てるポーズは聖者が魔よけや除霊の際に用いるサインです。
左手には三つの横木が連なる十字架を持っています。これは「教皇十字」と呼ばれるものでローマ教皇のシンボルとされ、これにも法王が統治する三世界が象徴されています。さらに法衣の中央の帯にも三つの十字が描かれています。

白色の背景が神の世界であり、２本の柱はここから先が聖域であり、神の世界と現世との仕切りであることがうかがえます。

法王は中央に座り、二人の僧侶に教えを説いています。
二人はそれぞれ赤いバラと白いユリの模様の法衣を着ています。
キリスト教においては、赤いバラはイエス、白いユリはマリアを示すシンボルです。信仰に対して情熱と純粋な心を持つ者ならば法王の慈愛を授かることが出来るのです。

足元に交差している鍵はペテロがイエスから預かった、神の世界への扉を開けることができる鍵です。

法王は権威の象徴とされ、道徳的に導く父性的存在なのです。